カームダウンスペースとクールダウンスペースに違いはあるのか?

クールダウンは馴染みがある言葉ですが、カームダウンは初めて聞くという人も多いと思います。

空港などでは、カームダウンスペースという場所が増えてきてるので、この機会に意味や利用用途を覚えておきましょう

空港などにあるカームダウンスペースは「感情や緊張が高まった時に少しでも緩和させる目的で作られた場所」です。

クールダウンとは何が違うのか?なぜ馴染みが少ないカームダウンを使っているのか?

この2つの疑問を深掘りしていきます。

この記事で分かること

カームダウンとクールダウンは何が違うのか?

なぜカームダウンという言葉を使っているのか?

この記事を読み終えると、カームダウンとクールダウンの言葉の違いがわかります。

また、カームダウンスペースを必要としている人も分かるので、空港や公共施設でカームダウンスペースを見つけたら周りの人にも教えてあげてください。

少しでもカームダウンスペースへの理解が増えてくれることを願っています。

カームダウンとクールダウンの意味は微妙に違う。ですが・・

まずはカームダウンとクールダウンの言葉の意味には少しだけ違いがあります。

クールダウン(cool down)の意味

クールダウン(cool down)は、「冷静になること、怒りや熱を冷ますこと」です。

スポーツや運動をして上がった体温や心拍数をもとに戻すのがクールダウンです。

また、ビジネスやコミュニケーションで怒ったり悲しくなった感情を元に戻すのもクールダウンが使われます。

つまり、肉体的にも精神的にも高まったものを平常に戻す作業としてクールダウンが使われます。

カームダウン(calm down)の意味

カームダウン(calm down)は、「気持ちを落ち着かせること」です。

クールダウンと似ていると感じる人もいるかもしれませんが、カームダウンは精神的な安定をうながすニュアンスで使われます。

気分などが「落ち着く・静まる・沈静化する」という時に使うのがカームダウンです。

これから紹介する「カームダウン・クールダウンスペース」は、カームダウンをする空間です。

カームダウン・クールダウンスペースが必要な人

カームダウン・クールダウンスペースが必要な人は、自閉症や知的障害、精神障害、発達障害、認知症、感覚過敏の症状をもつ方です。

このような特徴を持った人は、感情や緊張が高まり過度なストレスを感じるとパニックや癲癇(てんかん)の症状が出てしまうことがあります。

そんな時は、静かな落ち着ける場所で心を鎮めるのが有効ということが分かっています。

参考:障がい児のためのカームダウン環境(COZY Room)の開発・評価

本当に必要な人が、必要な時に、自由に使えるのがカームダウン・クールダウンスペースです。

詳しくは以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

なので空港まで走ってきた疲れを癒すためにカームダウン・クールダウンスペースを利用しないでくださいね。

本当に必要な人たちが使えなくなってしまいます。

カームダウン・クールダウンの意味と、その空間が必要な人の特徴が分かった思います。

ではなぜ、微妙に意味が違うカームダウンとクールダウンを合わせた名称が正式名称になったのか?

「カームダウンスペース」だけでも良いのでは?と感じた人もいると思います。

それは、カームダウンという言葉が日本人にとっては一般的ではないからです。

「カームダウン・クールダウン」が正式名称になった理由

カームダウンスペースだけだと一般的に分かりずらいという理由から「カームダウン・クールダウンスペース(室)」と呼ぶことが正式決定しました。

しかし本来の目的は「カームダウンをする場所」です。

ですが「ここはカームダウンスペースです!」と書いてあっても意味を知らない人は、何に使う場所なのか?よく分からないですよね。

逆にクールダウンは微妙に言葉のニュアンスが違いますが、日本人にとっては一般的なカタカナ英語です。

正しい意味までは分からなくても「クールダウン」と聞くと「休息」や「休憩」、「落ち着く」などのワードが浮かぶと思います。

なので「カームダウン・クールダウンスペース」と表記してあれば、なんとなく「休憩する場所なのかな」くらいは想像がつきますよね。

でも大事なのは、誰もが自由に使う休憩室ではないということです。

そのために、カームダウン・クールダウンスペースには使用用途を説明する以下のような注意書きがあります。

注意書きの例

・この部屋は気持ちを静めるための部屋です。

・このスペースは、気持ちを静めるためのスペースです。皆様のご配慮をお願いいたします。

このように「カームダウン・クールダウンスペース(室)」という正式名称と注意書きの表示が推奨されています。

これは、ピクトグラムを策定している(公財)交通エコロジー・モビリティ財団がJIS規格として決定しています。

東京オリンピックの開会式でも話題になったピクトグラムですが、カームダウン・クールダウンスペースにもピクトグラムがあります。

以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

カームダウン・クールダウンスペースと同じ目的のもの

カームダウン・クールダウンスペースと同じような概念が他にもあります。

同じような目的のもの

センサリールーム

スヌーズレン

クワイエットアワー

センサリールーム

センサリールームは、音や光、ニオイなどの五感の刺激が少なくなるように設計されている部屋です。

聴覚や視覚などの感覚過敏の症状がある人やそのご家族も一緒に安心して過ごせる空間や部屋のことです。

主にスポーツ観戦やライブ会場に導入されており、サッカーやバスケット、コンサートのような歓声が上がるイベントにも参加しやすいように設計されています。

音や光などを気にせず鑑賞できる空間になっています。

スヌーズレン

スヌーズレンは、1970年代にオランダから始まった余暇活動です。

光や音、匂い、振動、触覚などを感じながら障害を持つ方自身が好きなように過ごします。

誰からも指示されない空間で好きなように過ごしながら楽しんだり、リラックスしたりと、用途は様々ですが、認知症の老人のケアにも使われつつあります。

海外では一般家庭にスヌーズレンをもちいて、子供の感性や感覚を育むためのアプローチとしても使われています。

クワイエットアワー

クワイエットアワーは、音や光が多い商業施設やスーパーなどの運営側が、感覚過敏の方にたいしておこなう取り組みです。

ニュージーランドやイギリスをはじめ各国に広がりつつある取り組みで、一定の時間だけ照明の一部を消灯したり、BGMを無しにします。

感覚過敏の方でも来店できるような環境づくりをしています。

まだ日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、高齢者の方や、スーパーが騒がしくて行きたくない方にとっても利用しやすくなるので、今後はクワイエットアワーを導入する施設も増えると思います。

これら3つの取り組みや、カームダウン・クールダウンも、周りの理解や一般的に浸透することが大前提です。

多様な人がいることを理解し合って優しい社会にしていきたいですね。

カームダウン・クールダウンスペースの意味を正しく理解しよう

本記事では、カームダウンとクールダウンの意味の違いや、カームダウン・クールダウンスペースの正しい認識について解説してきました。

記事のおさらい

カームダウンとクールダウンの意味の違い

カームダウン・クールダウンスペースが必要な人

「カームダウン・クールダウンスペース」が正式名称になった理由

カームダウン・クールダウンスペースと同じ目的のもの

日本人にとってはカームダウンという言葉が馴染みなく、クールダウンという言葉を添えて理解してもらおうという試みから「カームダウン・クールダウンスペース」が正式名称になっています。

大事なのは、名称の違いではなくカームダウンという行為についての正しい知識を知る事です。

せっかく用意されている場所も利用方法が周知されていないと、機能しません。

人の心や知識の差が一番のバリアになります。

特に日本は、周りと違う人を特別な目で見る傾向が強いように感じます。

これからは海外の人と接する機会も増えることが予想されますので、

「違い」を「特徴」ととらえ、尊重し合える環境をみんなで整えていけると、もっと素敵な国になると思います。

では、また。