カームダウンスペースとは?意味を詳しく解説

最近空港などで見かけるようになったカームダウンスペースですが、何に利用するのか?分かりづらいですよね。

「カームダウン」という言葉に馴染みがないので当然だと思います。

カームダウンスペースとは「感情や緊張が高まった時に少しでも緩和させる目的で作られたスペース」です。

いまいちピンとこないかもしれませんが、カームダウンスペースを必要としている人がいます。

このことを知らずにいると、休憩室だと思って利用してしまったり、利用している人をジロジロ見たり、と無知をさらけ出すことになってしまいます。

大抵の人はカームダウンスペースのことを気にもとめずにスルーしているのが現状ですが、せっかく調べたこの機会にカームダウンスペースについて詳しくなっておきましょう。

この記事で分かることは以下のことです。

記事の内容

・カームダウンの意味を解説

・カームダウンスペースが必要な人とは?

・カームダウンスペースの効果を紹介

・カームダウンスペースの現在の状況

・カームダウンスペースの問題点

・カームダウンスペースの今後について

この記事を読み終えると、カームダウンスペースの正しい知識が身に付きます。

ご自身が利用するときや、利用者の方への配慮も含めて参考にしてください。

カームダウンの意味を解説

カームダウン(calm down)とは、気分や状態が「静まる・落ち着く・沈静化する」という意味で使われます。

同じような言葉にクールダウン(cool down)がありますが、こちらは「運動後のクールダウン」のように身体的な事象に使われます。

カームダウンは、内面的な事象に使われます。

カームダウンとクールダウンの違いについては別の記事で解説していますので参考にしてみてください。

カームダウンスペースが必要な人とは?

カームダウンスペースが必要な人は、自閉症や知的障害、精神障害、発達障害、認知症、感覚過敏の症状をもつ方です。

このような特徴を持った人は、感情や緊張が高まり過度なストレスを感じるとパニックや癲癇(てんかん)の症状が出てしまうことがあります。

そんな時は、静かな落ち着ける場所で心を鎮めるのが有効ということが分かっています。

参考:障がい児のためのカームダウン環境(COZY Room)の開発・評価

公共の場にもカームダウンスペースがあれば、感情のコントールがきかなくなったり、人混みで自分を保てなくなりそうな時に心を落ち着かせることができます。

付き添いの方も含めて、カームダウンスペースを有効利用することで今まで諦めていたイベントや旅行を楽しめるように、成田空港をはじめとする国内の空港では徐々に設置されるようになってきました。

カームダウンスペースは、健常者が休憩や食事に利用するスペースではないので、気をつけましょう。

カームダウンスペースの正式名は「カームダウン・クールダウンスペース(室)」という名称に決定しました。

カームダウンスペースの効果を紹介

パーテーションや、つい立てのような簡易的なスペースでも周囲と一定の距離をとることで不安の高まりや緊張を減少させる効果があります。

カームダウンスペースの効果は以下の3つが挙げられます。

カームダウンスペースの3つの効果

・感情の高まりを鎮める

・ストレスや緊張の緩和

・自分を取り戻す

ひとつづつ解説していきます。

感情の高まりを鎮める

本来のカームダウンスペースは、感情が高まった時に利用することではありません。

日頃から時間を決めてスケジュールに沿ってカームダウンをおこなうことが大切です。

感情が高まった時やパニックになった時にカームダウンスペースを利用すると、当事者はカームダウンスペース=パニックスペースと認識してしまいます。

ですのでパニックになる前に、普段からカームダウンスペースを利用する習慣をつけておきましょう。

外出時にカームダウンスペースがあれば、公共の場でも心を落ち着かせる習慣を継続することができます。

日常のカームダウンについては、下記の記事を参考にしてください。

参考記事:カームダウンスペースの作り方(現在執筆中)

ストレスや緊張の緩和

とはいえ、人混みや騒音がありストレスを感じてしまう場面もあります。

そんな時にもカームダウンスペースを有効に利用しましょう。

最近のカームダウンスペースは付き添いの人が一緒に入れるように椅子が2脚置いてあったり、集中できるように椅子の前にイラストが書いてある場所もあります。

一番いいのは日頃から使っているタオルやオモチャ、ぬいぐるみなどを持参することです。

慣れ親しんだ匂いや物があると、ストレスや緊張を緩和する手助けになります。

カームダウンスペースの問題点

カームダウンスペースの問題点は、一般的に認知されていないことです。

カームダウンスペースという名称もそうですが、使用用途やカームダウンスペースが必要な人がいるということ自体が知られていないことです。

2020年の東京オリンピック開催に伴い、空港や競技場にも設置されはじめていますが認知されていなければ意味がありません。

実際に車椅子ユーザーや疾患を持った方が利用すべき多目的トイレは、一般の人が利用していたり目的とは違う用途で利用されることもあります。

カームダウンスペースは突然の利用にも対応できないと意味がないため、予約は不要で無料です。

そのため、仮眠で利用したりお酒や飲食スペースで利用されないか?という問題点があります。

このような問題点は、カームダウンスペースを知っているか?知らないか?が重要です。

実際にカームダウンスペースが設置されている空港は正しい使い方がされているのか?現在の様子を確認してみましょう。

カームダウンスペースの現在の状況

2023年7月に北海道エアポートで開催されたカームダウンスペースのセミナーで、現在の様子を確認することができました。

まだ設置から日が浅い開催ではありましたが、現状では「本当に必要な人が利用できない状況」は確認ができていないそうです。

新千歳空港のカームダウンスペースは出入り口に床上40cmが開口するロールカーテンが設置されているので、外からでも利用状況を確認することができます。

また空港という特性上、保安目的の巡回も頻繁におこなわれているため「目的外の利用は難しいのでは」という意見がありました。

このように、まだ手探り状態ではありますが、具体的な課題として以下の4つがあげれています。

4つの課題

・一般的な認知度の低さ
・空港スタッフの認知度の低さ
・使用頻度が確認できない
・利用者の声が少なく、広さや騒音といった具体的な使い心地に不明点があること

これらの課題は実際にカームダウンスペースの運用を行なっているからこそ分かる課題点です。

課題を解決するための取り組みついて、3つの空港を確認してみました。

3つの空港

・成田空港の対策

・羽田空港の対策

・新千歳空港の対策

成田空港の対策

空港スタッフの認知を高めるため、研修を実施しているそうです。

利用者のご家族に向けては「搭乗体験プログラム」を実施し、予行練習のような体験ができます。

成田空港のカームダウンスペースの設置が早かったこともあり、課題に対する対策の実績も数多くありました。

成田空港の対策実績

・他の子供が遊んで待っていられるようにキッズスペースと同じフロアにカームダウンスペースを設置
・手続きで緊張したりストレスを感じた時にすぐに利用できるように、チェックインカウンター近くに設置
・平面だった個室型の天井部を円弧型に変更し空間のスペースを確保
・簡易型より広い居住型のカームダウン室を増設
・「なりたくうこうからりょこうへいこう!」というダウンロード可能な空港予習冊子を作成し、カームダウンスペースの場所や飛行機に乗るまでの手順を紹介

常に利用者のことを考えてくれている対応が素晴らしいですね。

羽田空港の対策

利用する方のリアルな意見を取り入れるため、利用者の方と一緒にターミナルの視察や調査を実施しているそうです。

また手荷物検査時に不安を感じるケースが多いことから、保安区域内にカームダウンスペースを設置しています。

2023年度中には第3ターミナル内にも設置する予定があるそうです。

新千歳空港の対策

空港スタッフへのセミナーを実施したり、利用者へのアンケートを設置し改善に努めているそうです。

上記3つの空港以外でも「まだ始まったばかりの取り組みなので、活動していく中で改善を進め必要に応じて対応を検討していく。」とのことでした。

カームダウンスペースの今後について

カームダウンスペースの今後の課題として以下の3つがあります。

今後について

・カームダウンスペースに統一基準がない

・大阪・関西万博での検証

・正しいカームダウンのやり方を周りの人も周知する

順番に解説していきます。

カームダウンスペースに統一基準がない

カームダウンスペースの仕様に統一の基準がありません。

設置場所や遮音性能、照明などは設置団体にゆだねられており、施設によってバラツキがあります。

各施設がそれぞれ進めるのではなく、すでに検証済みのカームダウンスペースを導入するほうが利用者にとってはメリットがあるかもしれません。

岡山県の建材メーカーであるオーエム機器は2023年8月に「MOMOTTE(モモッテ)カームダウンスペース」を発売しています。

このように「どこに行っても同じ環境のカームダウンスペースがある」ということが安心につながります。

実際に販売元のオーエム機器さんには、大学・市役所・図書館など、さまざまな施設から問い合わせがきているということでした。

大阪・関西万博での検証

コロナの影響で無観客になった東京オリンピック・パラリンピックは、十分な検証がおこなえませんでした。

ですが、つぎの国際イベントである2025年に開催予定の大阪・関西万博の会場にもカームダウンスペースの設置が検討されています。

オリンピック・パラリンピックほどではないにしても、大阪万博が開催されれば検証ができるはずです。

すでに大阪万博に向けて改修中の関西国際空港では、第1ターミナルに完成した国内線新エリアにカームダウンスペースが2ヶ所設置されています。

正しいカームダウンのやり方を周りも周知する

正しいカームダウンのやり方や取り組みを、周りの人が周知することも大切です。

日本発達障害ネットワーク理事長で児童精神科医の市川宏伸さんは「パニック症状が出たら、なだめようと話しかけると逆に興奮してしまうので、10分~20分落ち着くことが重要」とおっしゃっていました。

カームダウンの効果でお伝えしたようにカームダウンスペース=パニックスペースと認識させないのと同じで、周りの人が正しい知識を持つことが大切です。

カームダウンスペースの意味を正しく理解しましょう

本記事ではカームダウンの言葉の意味から、得られる効果、問題点などさまざまな視点から解説してきました。

記事の内容

・カームダウンの意味を解説

・カームダウンスペースが必要な人とは?

・カームダウンスペースの効果を紹介

・カームダウンスペースの現在の状況

・カームダウンスペースの問題点

・カームダウンスペースの今後について

大事なのは、周りの人がカームダウンについての正しい知識をえる事です。

せっかくカームダウンスペースや多目的トイレなどのバリアフリースペースがあっても、利用方法が周知されていないと、必要な人が正しく利用できません。

人の心が一番のバリアです。

特に日本は、周りと違う人を特別な目で見る傾向がつよいように感じます。

「違い」を「特徴」ととらえ、尊重し合える環境をみんなで整えていけると、もっと素敵な国になると思います。

では、また。